2012年7月7日土曜日

春の雪

2005年日本

撮影・ 李屏賓(リー・ピンビン)


 この日本の作品はカメラが台湾の李屏賓(リー・ピンビン)なので観てみた。彼が撮影した作品はハズレがない。


それぞれ一場面を切り取っても画になる
 画はよかったか、普段親しんでいる台湾の作品のラフな感じに比べると、細々きっちり、次から次へと綺麗な画が出てきて、かえって退屈してしまう。きれいなものばかり詰め込めばいいというものではない。


「バリー・リンドン」を思わせる豪華さ
久しぶりに日本の映画。気づくのが、潤沢な資金いうこと。役者も豊富。歴史も文化も豊富。時代考証もきっちりしている。


侯爵役用の人材も豊富だ

 さすがに台湾より人口が5倍ある日本。歴史もある。いろんな面で体力のあるところを見せるのだが、写真を撮るため見返し始めて開始三十分で断念。二回観るのがつらい。


 なぜだか考えるに「和」という結論に至った。強烈な作家性を持つ侯孝賢(ホウ・シャオシェン)や、すべて自分中心でまとめてくる鈕承澤( ニウ・チェンザー)と比べるのもあれだが、文字通り和過ぎるのだ。

チームの和、役者やスタッフやらとの和、スポンサー、代理店との和。和が完璧すぎて、特定の個人の主張が見えなくなってしまっている。
三島由紀夫の原作を見事に再現しているが、原作を絶対に超えられないな、というのはすぐに分かってしまう。誰も和を乱して主張している者が一人も見当たらないので。

及川光博が刈り上げの軍服で出てきて、少し期待したが、出オチ。

鳥肌実。

 監督って自分の我をガンガン出してくるものかと思っていたので、がっかり至極。

かくいう僕もどっぷり日本人で普段慣れ親しんでいる和の域にいて、映画にはそれをぶっ壊して欲しいのだが、この作品には無理なようだった。僕たち日本人の特性が、良くも悪くも色濃い作品か。

 「和を以て貴しとなす」の伝統は今でもなくなっていない。


 日本とは? を追求し続けた三島由紀夫が観たらどう思うのか聞いてみたい。


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