百年恋歌
2005年台湾
原題 最好的時光 Three Times
監督・ 侯孝賢(ホウ・シャオシェン)
主演・ 舒淇(スー・チー)張震(チャン・チェン)
撮影・ 李屏賓(リー・ピンビン)
驚きの連続の映画である。しかし文字に書いても、キャプチャを載せてもこの映画の驚きは伝わりにくいと思う。
台詞は少ない。演技も、抑え気味。もちろCGも使っていないし、アップが少なく無表情が多いので感情は伝わりにくい。気を抜いていたらどんな話だったか追尾できなくなる。
しかし、この地味なペースにいったん乗ってしまうと引き込まれる。
真夏の白昼、自転車で走る |
兵役に行かないと行けない若い男 |
カメラの動きが独特で驚いた。異様に間合いがゆっくりとしていて、なんだか重さ500Kgのカメラをじりじりと動かしているような鈍重な動き。しかしその構図構図に味があることに気がつくとやみつきになる。何がいい、と言えないところが驚きである。
しかもカメラの前をエキストラの人が普通に横切る。下の一番盛り上がるビリヤード場の再会シーンで、国際的なスター二人が最高に自然なすごい演技をしていると言うのに。仕方なく観る側が自分で二人の様子を想像で補完することを強いられる。
一番いいシーンなのに |
関係ないビリヤード客が前をウロウロ |
あのスーチーがいつになく可憐だというのによく見えないじゃないか |
一部のラスト、盛り上がってどうなるのか!? とテンションが上がりかけた瞬間にスコンと暗転。BGMの甘い曲だけそのまま盛り上がり続ける。このセンスはすごい。皆まで言わず、ここから先は観客に託したのだろう。観客を信頼していると理解した。
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このシーンは必見です |
このあとの構成にも驚く。三部構成のオムニバスだが、出ている役者はすべて一緒、という変わった構成。
キャプチャで紹介した第1部「恋愛の夢」は共感しやすいいい話。
第2部「自由の夢」は1911年という設定で衣装とセットが見事だが、ちょっと難解。
問題の第3部「青春の夢」が息苦しくてどうしようもなくすっきりしない終わり方。こんな全く違うものを3つまとめて撮ってしまうという侯孝賢(ホウ・シャオシェン)がよく分からないが、なにか意味があると思えてしまう。
後味の悪い第2部と第3部を何度か観ているうちに少し分かったのが、これは裏切りの話である。仕事をいいわけに女を裏切る。愛欲におぼれて恋人を裏切る。誰でも生きていれば経験するかもしれない話。
おそらく侯孝賢は、ただ見せるだけのものを作ったのではなく、観る側に物語を投げかけるものを作っているのだろう。しかもスッキリする物語だけではなくて、目を背けたい物語、心の傷に触ってくるような物語も抱き合わせでだ。
観る側に集中力が要求されるが、人格を子供扱いをしないで一緒に物語に巻き込もうとする侯孝賢の信念に脱帽である。
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