2012年7月27日金曜日

台湾のポスター(忠犬ハチ公の映画らしい)


いろいろ突っ込みたくなるポスターだ。
  1. ハチは小八(xiaoba)
  2. 漢字の中のリチャード・ギア
  3. 日本の話のはずなんだが、もう何がなにやら

2012年7月18日水曜日

LOVE

2012年台湾・中国

原題: 
http://www.oaff.jp/program/screening/06.html

出演:
舒淇(スー・チー)
趙薇(ヴィッキー・チャオ)
趙又廷(マーク・チャオ)
阮經天(イーサン・ルアン)
鈕承澤(ニウ・チェンザー))
郭采潔(アンバー・クオ))
陳意涵(アイビー・チェン)
彭于晏(エディー・ポン)



アジア線の機内放送でこの映画を観ることが出来た。
日本語字幕はなかったが、二回目なのでだいたい分かった。

一回目は大阪の第七回アジアン映画祭で観た。



鈕承澤の映画を見る人がこんなに集まるとは感激
映画祭の限定上映と言うことも有り、満席で入りきらない人が出るほどの人気。
一般公開やDVD発売が待たれる

前回書いたビバ!監督人生!!ではではさんざん、いじった鈕承澤、役者として出てくる本人は、ただの出たがりのおっさんに見える。

しかし彼の作る作品ははっきり言って、ダントツにおもしろい。この映画最新作も誰が観ても泣いて笑って楽しめるよく出来た作品だ。


内容はラブコメ。よくあるラブコメと言ってもいい。

出演の中で、まだ新人の部類で、国際的にはまだまだな、彭于晏、趙又廷や郭采潔がよかった。キャスティングがよいバランスだと思う。

もともと、この人は今までのテレビドラマでラブコメを作っていた人だ。「求婚事務所」など日本でも一部で人気が出たが、素人くさい役者、低予算な作り、で唯一脚本のおもしろさで維持していたような作品だった。
その系統の作品を最高のカメラ(李屏賓)と役者で予算をかけて撮ってみたのがこの作品だろう。


個人的な思い込みだが、台湾は動画制作全般のクオリティが高いと思う。旅行に行って、ガイド系の動画などがとてもわかりやすい気がする。テレビを観ても、言葉が分からなくても何をやっているか分かりやすい。

国際政治的に微妙な位置にいることと、もしかして関係があるのかもしれない。
わかりやすく伝えてなんぼ、という国民性があるのかもしれない。
もともと社交的な中華系の他者とのコミュニケーション能力にますます磨きがかかっているのではないか。

北京での撮影で中国と台湾との立場現す部分が出てくるが、政治的に扇動的な表現は一切ない。
たとえば、北京の権威主義的な警察官とか、観光地でがさつな大陸中国団体客とか、大陸から見るとスカした台湾人であるとか、しかし深く知り合えば皆善人という設定。
これは穏やかで、コミュニケーションに長けた台湾にしか作れない映画だと思う。

しかし、この作品予算をかけたと言っても、10億も行かないらしい。彼の制作するのものがいかに付加価値が高いか、思い知らされる。
ただの出たがりのおっさんではない。

日本の企業も侯孝賢にしたようにこの人にもお金を出してあげたらいいと思う。
彼は日本好きでもあることは、ヒシヒシと感じられるので、ものすごくいい作品を作ってくれると思う。

侯孝賢の映画よりかは絶対人気が出る。(侯孝賢は好きだが)

2012年7月10日火曜日

台北カフェ・ストーリー


2010台湾
原題: 第36個故事
監督・脚本: 蕭雅全(シアオ・ヤーチュアン)
製作総指揮: 侯 孝賢(ホウ・シャオシェン)
監督: 侯孝賢(ホウ・シャオシェン)
出演: 桂綸鎂(グイ・ルンメイ)、張翰(チャン・ハン)、林辰唏(リン・チェンシー)



台北がきれいに撮れている。
とくに見逃せないのが、無人となった台北市の風景。
この高速道路に車がないシーンは、軍事訓練で通行止めとなる20分を狙って撮ったらしい。
撮れたシーンは息をのむ美しさ!
DVDの特典映像にこのシーンの撮影のメイキングがあっておもしろかった。
その前準備で、映り込みそうな高架下の車やカップル、浮浪者のおっさんにどいてくれと言い回る映像が収められていて苦労が忍ばれる。



母も長女も次女もの一家の話。この女ばかりの一家は上海から来たらしい。

長女が主人公で見た目はかわいいが、なかなかシビアというか、自立しているというか、かわいげがないというか、ブーたれがちというか、よく言えば、自分の考えをそれぞれしっかり持っていて主張する。

屋台でなにか食べながら



ぶっきらぼうというか気まぐれな次女の役者、この映画でははまり役。
林辰唏(リン・チェンシー)という人。


おしゃれでツンケンしているのがはまり役。cool!


ぶっきらぼうというか気まぐれな次女の役者、この映画でははまり役。



このしっかり者の女性たち、どこにも依存せず距離を置いて自立しようとしている。
台湾弁バリバリの農家のおっさんの軽トラと交通事故を起こしても妥協せず、
日本人の夢見がちな兄ちゃん(中孝介)をすげなくあしらい
団体で押し寄せた大陸の中国人に顔をしかめる。
付き合う男も、長女は元副操縦士というもっさりしたおっさんと、次女はいうことをよく聞くおとなしい男。


自転車のシーンも素晴らしい。nostalgic!




結局カフェを手放し、長女は世界35都市へ旅立ち、次女は新車を買う。


台北の夜景と世界地図を重ね合わせた。beautiful!


台湾映画を観ていて思うのは、女性がしっかり自立しているということだ。

ぱっと見、おしゃれなカフェの映画に見えるが、主体的に生きていく者を描いた容赦ない話だと思った。



ところどころで台北の街角の人々に、いろんなインタビューをして答えさせている。
これも必要なカットだったと思う。映画の登場人物以外にもいろんな生き方があるよ、ということで。


似たようなシーンが「ビバ!監督人生!!」でもあった。

この映画、日本でも単館ロードショーされ始めたらしい。
http://www.taipeicafe.net/
以前台湾版のDVDを買ってきて、何回か観てのレビューであるが、近くに来たら映画館で観てみよう。

2012年7月7日土曜日

春の雪

2005年日本

撮影・ 李屏賓(リー・ピンビン)


 この日本の作品はカメラが台湾の李屏賓(リー・ピンビン)なので観てみた。彼が撮影した作品はハズレがない。


それぞれ一場面を切り取っても画になる
 画はよかったか、普段親しんでいる台湾の作品のラフな感じに比べると、細々きっちり、次から次へと綺麗な画が出てきて、かえって退屈してしまう。きれいなものばかり詰め込めばいいというものではない。


「バリー・リンドン」を思わせる豪華さ
久しぶりに日本の映画。気づくのが、潤沢な資金いうこと。役者も豊富。歴史も文化も豊富。時代考証もきっちりしている。


侯爵役用の人材も豊富だ

 さすがに台湾より人口が5倍ある日本。歴史もある。いろんな面で体力のあるところを見せるのだが、写真を撮るため見返し始めて開始三十分で断念。二回観るのがつらい。


 なぜだか考えるに「和」という結論に至った。強烈な作家性を持つ侯孝賢(ホウ・シャオシェン)や、すべて自分中心でまとめてくる鈕承澤( ニウ・チェンザー)と比べるのもあれだが、文字通り和過ぎるのだ。

チームの和、役者やスタッフやらとの和、スポンサー、代理店との和。和が完璧すぎて、特定の個人の主張が見えなくなってしまっている。
三島由紀夫の原作を見事に再現しているが、原作を絶対に超えられないな、というのはすぐに分かってしまう。誰も和を乱して主張している者が一人も見当たらないので。

及川光博が刈り上げの軍服で出てきて、少し期待したが、出オチ。

鳥肌実。

 監督って自分の我をガンガン出してくるものかと思っていたので、がっかり至極。

かくいう僕もどっぷり日本人で普段慣れ親しんでいる和の域にいて、映画にはそれをぶっ壊して欲しいのだが、この作品には無理なようだった。僕たち日本人の特性が、良くも悪くも色濃い作品か。

 「和を以て貴しとなす」の伝統は今でもなくなっていない。


 日本とは? を追求し続けた三島由紀夫が観たらどう思うのか聞いてみたい。


2012年7月6日金曜日

百年恋歌

百年恋歌

 2005年台湾 

原題 最好的時光 Three Times
監督・ 侯孝賢(ホウ・シャオシェン)
主演・ 舒淇(スー・チー)張震(チャン・チェン)
撮影・ 李屏賓(リー・ピンビン)




驚きの連続の映画である。しかし文字に書いても、キャプチャを載せてもこの映画の驚きは伝わりにくいと思う。
台詞は少ない。演技も、抑え気味。もちろCGも使っていないし、アップが少なく無表情が多いので感情は伝わりにくい。気を抜いていたらどんな話だったか追尾できなくなる。
しかし、この地味なペースにいったん乗ってしまうと引き込まれる。



真夏の白昼、自転車で走る


兵役に行かないと行けない若い男


カメラの動きが独特で驚いた。異様に間合いがゆっくりとしていて、なんだか重さ500Kgのカメラをじりじりと動かしているような鈍重な動き。しかしその構図構図に味があることに気がつくとやみつきになる。何がいい、と言えないところが驚きである。
しかもカメラの前をエキストラの人が普通に横切る。下の一番盛り上がるビリヤード場の再会シーンで、国際的なスター二人が最高に自然なすごい演技をしていると言うのに。仕方なく観る側が自分で二人の様子を想像で補完することを強いられる。

一番いいシーンなのに

関係ないビリヤード客が前をウロウロ

あのスーチーがいつになく可憐だというのによく見えないじゃないか



一部のラスト、盛り上がってどうなるのか!? とテンションが上がりかけた瞬間にスコンと暗転。BGMの甘い曲だけそのまま盛り上がり続ける。このセンスはすごい。皆まで言わず、ここから先は観客に託したのだろう。観客を信頼していると理解した。

このシーンは必見です


このあとの構成にも驚く。三部構成のオムニバスだが、出ている役者はすべて一緒、という変わった構成。
キャプチャで紹介した第1部「恋愛の夢」は共感しやすいいい話。
第2部「自由の夢」は1911年という設定で衣装とセットが見事だが、ちょっと難解。
問題の第3部「青春の夢」が息苦しくてどうしようもなくすっきりしない終わり方。こんな全く違うものを3つまとめて撮ってしまうという侯孝賢(ホウ・シャオシェン)がよく分からないが、なにか意味があると思えてしまう。
 後味の悪い第2部と第3部を何度か観ているうちに少し分かったのが、これは裏切りの話である。仕事をいいわけに女を裏切る。愛欲におぼれて恋人を裏切る。誰でも生きていれば経験するかもしれない話。

 おそらく侯孝賢は、ただ見せるだけのものを作ったのではなく、観る側に物語を投げかけるものを作っているのだろう。しかもスッキリする物語だけではなくて、目を背けたい物語、心の傷に触ってくるような物語も抱き合わせでだ。
 観る側に集中力が要求されるが、人格を子供扱いをしないで一緒に物語に巻き込もうとする侯孝賢の信念に脱帽である。



2012年7月4日水曜日

ビバ!監督人生!!

ビバ!監督人生!!
2007年台湾

原題 情非得已生存之道 what on earth have I done wrong
監督・主演・脚本 鈕承澤( ニウ・チェンザー)
出演 張鈞甯(チャン・チュンニン)


台湾の映画人、鈕承澤( ニウ・チェンザー )は何者か? 日本の概念では定義しづらい。テレビドラマや映画を作ったり、自分も演じたり。日本で近いのはビートたけしだろうか。台湾の状況が日本ほど組織化されていないので個人力で突破するしかないように見える。それ故、彼の作品は、強烈な彼の存在感が漂わざるをえない。



しかし、単純に「かっこいい俺」を出してくるわけではない。そもそも役者に比べたらかっこいい風貌をしているわけでもない。自虐ネタを入れつつ、本職の役者の間に食い込んでくる役柄で出てくる。たとえば、登場人物の兄とか、主人公の勤める会社の社長とか、ヤクザのボスとか。
必ず一番おいしい脇役だ。そこが多分一番居心地がいいのだろう。


だがこの映画デビュー作では堂々たる主演。
やりたい放題の、自虐ネタ過積載の暴走トラックのような、この作品を紹介します。

映画仲間との馬鹿話の飲み会。楽しそうでうらやましい。 


この映画の登場人物は全員実名で役も自分自身を演じています。セットもなく、自分の事務所や、レストラン、誰かの自宅で撮影されている。恋人役の女優を除いてあとは全員関係者でおそらくノーギャラで出演していると思われる。

ドキュメンタリー風の嘘話のことのようです。

かなりいい加減な感じですが、創作意欲がある人だということは伝わってきます。

集めたスタッフの前で、なかなかのアジりですが…


金儲けのテレビドラマではなく「作品」を作りたいと言うのですが、どんな作品を作りたいのか、よくわからない。資金集めも厳しいものがあります。

実のお母さんにも金の無心をします。




とてもおしゃれな部屋に彼女と同棲しています。この人の作品の部屋の内装はいつもおしゃれ。

資金集めに苦労をして、飲みたくない酒を飲んで帰ってきました。

映画の撮影のふりをして、インタビュー中に背後から政治家のヅラをはぎ取れ、とスタッフに命令します。本当にどんな映画を撮りたいのか、本人すら分かっていない気がします。


危うしカツラ。ドキドキします。
ビビってカツラに手を出せなかったスタッフに切れまくります。


ここらあたりまでは、笑いで済んだのですが、激しすぎる性格ゆえ、うまく行かない状況にいらだち、トラブルを起こしてしまいます。
次から次へと難題がふりかかる。自業自得とも言えるが、気の毒だ。しかしそれ以上に気の毒なのは、この人の恋人。

浮気がばれますが、全く反省しません。 

いままで彼女に隠してきたことをカミングアウトするが… …
彼女にも去られ、映画制作も暗礁に乗り上げます。

引きこもりがちで、すっかりやる気を失ってしまいました。

リーダーを失ったスタッフたちはサボりにかかります。


結託して経費で 昼飯(鼎泰豊)に行くスタッフたち。
カミングアウトを進めたカウンセラーに文句を言いますが、時すでに遅し。


この映画に登場する女性は皆、しっかりしています。勝手な主人公に振り回される恋人も、自分を保っていますし、カウンセラーの女性も冷静にいいことを言う。母親も包容力がある。
この主人公、勝手で人を人とも思わぬところがあるが、人(主に女性)には恵まれている。創作する、という自分の役割にはとことん忠実なのでそこが憎めないのだろうか。
しかし男同士はそれほど甘くない。映画プロデューサーも海千山千で、資金集めを担当しつつも、他の仕事をしているし、付き合わざるを得ない金持ちの投資家もろくな奴がいない。

そんななか、唯一心を許せた男性、仲の良かったヤクザの幼なじみが死んでしまう。

どういう死に方なんだ


すべて失ってしまい、もう何がなんだかで自暴自棄になって途方に暮れる主人公。



母親が作ってくれたソバをすすりながら

母と四十過ぎの息子
絵面的には コントみたいですが、同年代の同性の僕も、この心情理解できなくはない。泣きそうになった。
しかし実のお母さんにこんなことをやらせて映画に出すなんて、ニウ・チェンザー。創作のためなら何でもやるんだな……


実のお母さん… …

そしてすっきりした状態で、またいろいろ再生していくと言う話。

散髪しました

政治について語ったり、台湾の状況について語ったり、家族や恋人のことを織り込んでいるのだが、ほとんど主人公のやりたい放題ぶりしか印象に残らない。
そこをどう取るかで評価も変わるだろう。僕はいたく感心した。低予算でこんなにおもしろいものがとれるのかと。
裸の自分をここまで出せる理由はただ一つ、創作したい、という魂のなせる技。僕はこの人の作品は信頼する、と心に決めた。



振り返ってみると「喪失と再生」という村上春樹的なテーマになっている。意識したのかどうかは分からないが。
※実際、村上春樹の本を読んでいるらしく、別ドラマ中や、彼自身のブログにも「海辺のカフカ」や「1Q84」が登場する。

デビューとしてはこれでいいんだろうが、次以降どうなるのか、刮目して待ちたい。




この映画の日本版DVDはもう一本別の映画とカップリングとなっています。もう一本の「練習曲」は別の監督の作品ですがこれもいずれ取り上げたいと思います。



ちなみにこの映画で、カツラをはぎ取られそうになった政治家、ついにカメラの前で、暴漢にはぎ取られたとテレビのニュースに!